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茶つぼのなみだ雨

舞台:愛知県額田郡幸田町

民話の舞台となった愛知県幸田町の大草の地は、平安時代に山岳密教の修行の場として栄えたと言われています。それら繁栄の面影は浄土寺を始めとする大草地内の寺や、山中の坊舎の跡、経塚などさまざまな形で現在に伝えられています。
民話に登場する茶つぼと同様に、大草の山中からは完全な形の壷が発見されることがあります。現在では、このような壷は中世に築かれた墓に埋納された蔵骨器と考えられていますが、そのような知識を有しなかった江戸時代の人々が、山の中から見つかった壷を不思議な壷と考えたのは無理もないことです。
しかしながら、壷に関わるさまざまな逸話からは、壷の霊的な力を匂わせる人々の想像力を感じることができます。宗教的な文物や伝承が多く伝わる大草の地に住む人々の信仰心が自然とこのような逸話の創生へとつながっていったのかもしれません。